5月 22, 2011

ブタとおっちゃん

丸亀市役所の元職員さんが最初自費出版したのが話題となり、出版社から新装版となって世に出された写真集「ブタとおっちゃん」。すっかりとりこになってしまった。このおっちゃんのかっこよさ。日本にもまだこんなおっちゃんがいたのか。

おっちゃんは、何度も賞を取るほどの凄腕の養豚家。朝起きてから寝るまでずっとブタのそばで過ごす。昼寝するのもブタと一緒。新聞を読むときもブタにもたれて。ビールを飲むときもブタのそば。ブタを相手にギターを奏で、犬や猫、牛や馬、猿や鶏もブタと一緒に飼っている。おっちゃんに負けず劣らず、動物たちもみんないい顔をしている。

おっちゃんは、ブタの世話の一切を自分と奥さんの2人だけでこなす。お産の世話や、手術もやる。子豚をできるだけ長く母親のそばに置く。そのおかげか、子豚たちの顔が何ともいえず可愛い。ブタにストレスを感じさせないことが、肉質にも影響するのだそうだ。当然だと思う。

おっちゃんと子豚
食肉の大量生産のために、どんどん畜産業の機械化が進むなか、このような育て方は珍しいそうだ。

これが本当に日本?というような写真がたくさん載っている。

私のいたインドの村ではこれが普通だった。色んな生き物が人間とともに暮らしていた。

日本も、ほんのひと昔前まではそうだったはず。

お母さんの周りを駆け回る子豚たち

日本の町は、いつのまにこんなに都会化してしまったんだろう。本当に。あっという間に。

毎年何万匹もの野良猫や野良犬が人間によって殺処分され、町の「衛生」が保たれる。

野良猫の糞よりも、もっと危険なものを、いまこの瞬間にも、人間は空に海に垂れ流しているというのに。

子豚とおっちゃん。まるで孫みたい。

見ているうちに、なんだか泣きそうになった。

なんか迷子になったような気分。

このおっちゃんのような暮らしに憧れていながら、実際は正反対の生活を送っている情けない自分。

私もまた、「都会の人間」という傲慢な種族の一員なのだ。


この春オープンしたばかりの大阪の駅ビル。
エッシャーの「だまし絵」みたい。
なんとなく現実感に欠ける。

海と山と多くの動物に囲まれたおっちゃんの世界、そして私の通う人間と機械ばかりの大阪駅。同じ国なのに、そのあまりのギャップにくらくらと目眩がしそうになる。

ずいぶん感傷的な日記になってしまったと反省しつつ、せっかく書いたのでこのままアップ。

2 件のコメント:

  1. 三枚目の写真が、特に良いですね~。
    とっても懐かしい気持ちになりました。
    何か大事な忘れ物をしたような・・・。

    「ブタ」って、悪口に使われるけど(「ブタに真珠」とか)、改めないといけませんね。

    でもこのおっちゃん、やはり出荷するときは複雑な心境なんでしょうね。

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  2. いいでしょう!他にもすごくいい写真がいっぱい載っています。

    土の匂いというか、そういうものがたまらなく懐かしく感じるときがありますよね。

    ブタを出荷するとき、たしかに複雑でしょうね...まあでもペットとして飼っているわけじゃないので、野菜や米の農家と同様に、おっちゃんも誇らしい気持ちで出荷するんじゃないでしょうか。そして、野菜や米と同様、ブタも残さず食べてほしいと思っているでしょうね。耳から足の先まで全部(笑)。

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