8月 29, 2012

天神さんの朝顔

ゴーヤの花と並んで咲いている天神さんの朝顔

夏も終わりに近づいた今日この頃、ベランダでは小さな青い花をつける「天神さんの朝顔」が毎朝たくさん花を咲かせている。ゴーヤの花と並んでも大体同じぐらいの極小サイズの朝顔。

 数年前、仕事帰りに大阪の天神さんのそばの道端で咲いているのを見つけて、タネができるのを待ち、タネを採取して持ち帰り、家のベランダに植えた。野生的なのだろうか、ものすごい生命力でどんどん増えた。今では毎年どのプランターからも、小さな青い朝顔が芽を出し、夏の終わりを飾ってくれる。大ぶりの派手な朝顔にくらべて、なんともいえず愛くるしい。

朝起きるとすぐベランダに出て、この小さな妖精のような花が日の出の茜色の光に照らされて全員紫色に輝くのを目撃する。なんとなく私まで神の祝福を浴びたような気分になる。

8月 18, 2012

人体実験みたいな

暑い。

でも、畑ではもうコウロギの子どもが姿を見せているし、ウマオイも鳴いている。鈴虫の声も聞いた。季節はいつしか着実に秋にむかって進んでいる。

夏野菜の名残がまだとれる。ズッキーニ、きゅうり、オクラ。いつまでも畑に生やしておくと、畑のおっちゃんに怒られる。早く片付けて、次の冬野菜の準備せなあかん!と急かされる。でも、初めてのことだし、じっくりと野菜たちがどうやって朽ち果てていくのか見てみたい気がする。ほんとなら、そうやって朽ち果てるときにタネを落とし、放っておけば来年また同じ場所に胡瓜やオクラが生えてくるのだろう。そして、それらが自然に生えてくるときが、おそらく植え時なのだろう。そんな風な野菜作りはできないものか。そんな悠長なこと、やっぱり無理か。

この猛烈な暑さのせいか、最近よくものが腐る。先日は大量に作っておいた夏野菜のカレー、まだ誰も食べないうちに表面が腐っていた。朝、ちゃんと火を入れていたのにもかかわらず、夜帰ったときにはそんな状態だったのだ。あまりに悔しいので、表面だけ削って火を入れなおし、せっせと残りを食べている。お腹をこわすかと思ったけど、何ともない。我ながら強いお腹だと思う。他の人は食べてくれない。ま、いいけど。

そして今日も、ものすごく危険なものを食べた。

母もサナギも出払って、ひとりきりの昼ごはん。ひとつ自分だけの特別メニューを作ってやろうと思い冷蔵庫を見たら、早急に処理すべきもの発見!

1. ドライトマトのオリーブオイル漬け:この前作ったやつだが、焼き方が浅かったのか、
   ちょっと発酵し始めている。つまり腐りかけ。なんか発砲性のものになっている。

2. イギリスの高級チーズ:知人にもらった。青かび系のすんごい匂いのするやつ。
   食べるとちょっと舌に刺激がある。粉チーズが苦手な人は卒倒しそうなチーズ。
   それがちょっと残ったまま、いつしか数ヶ月(!)が経ってしまっている。

主に危険そうなのは上記2つ。これにニンニクのみじん切り、育ちすぎた自家製ズッキーニのスライス、古い雑穀パンをちぎったもの加えてフライパンで炒めてみた。

なんか非常に危ない香りがする。特に高級チーズ、ものすごく高級なイタリア料理店で香っていそうな匂いといったらいいのだろうか、ちょっと近所に申し訳なくなるような匂い。匂ったことないけど、もしかすると「くさや」って、こんな匂いなのかも...みたいな。ドキドキしてくる。

でも、見た目はなかなか美味しそうなものができた。スペインでは、残り物のパンで焼き飯ならぬ「パン炒め」を作るらしい。ミガスというそうな。何となく、それっぽいものができた。ベランダからとってきたバジルの葉っぱをたっぷり入れて、スペイン風パン炒めの出来上がり!


名付けて、「ドライトマトとズッキーニのスペイン風パン炒め」

しかし、これはスリル満点。死んだらどうしよう...と思いながら、思い切って食べてみる。

こ、これはっ!美味い~!しかも、このチーズの匂いが効いているではないか。ドライトマトを漬け油ごと全部入れたので、けっこう油っこいけど、その油がパンに滲みてパンがめちゃくちゃ美味しくなっている!ま、死んでもいいか、美味しかったし。

こうやって廃材で偶然美味しいものが出来上がるとめちゃくちゃ嬉しい。かくして、ひとりきりの昼ごはんは、往々にして秘めごとのような、人体実験のようなものになる。そうやって色んな細菌を腸内にたくわえて、少々のバイキンでは死なない体を作っていくのであった。(そのうち本当に死ぬかもしれない)

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関係ないけど、最近おもしろかったこと。新しい単語をなかなか覚えられないお年頃の母。「万願寺とうがらし」のことを、いつも「観音寺ピーマン」と言ってしまう。まあ雰囲気は伝わるからいいけど...(笑)

8月 12, 2012

初めての東京&自転車生活社

わけあって、このたび急に決まったサナギと私の東京ふたり旅。サナギにとっては初めての、そして私にとっても実質初めての東京行きとなった。

 行きは「こだま」でのんびりと。わざわざ「富士山が見えるほう」の席を購入。途中、ようやく待望の富士山らしきものが遠くに見えたけど、なにせ地理音痴の私達、ふたりとも自信がない。これは本当に富士山なのか?? 他にそれらしき山は無かったし...

向こうに見えるあれが富士山??(富士川を過ぎたあたり)

宿は浅草。旅をするときは基本的に国内であっても「異邦人」でいたいので、迷わず外国人用のホステル「サクラホステル浅草」を選んだ。本当に寝るだけのシンプルな宿。

地下鉄で夜の浅草に到着。地上に上がるとすぐに、同僚から事前に聞いていた例のアサヒビールの「きんと雲」を発見!さっそく写真を撮ろうとしたら、その隣に見たくなかったものが見えてしまった。ああ...やっぱりここにあったのか。

大きい、高い、速い等々の人工物を毛嫌いする傾向のある天邪鬼な私は、断じてスカイツリーなど見に来たのではない。が、きんと雲の写真を撮っていたら、まるでスカイツリーを見に来た観光客みたいになってしまった。なんて屈辱的な!なんと心外な!ということで、悔しついでに一応スカイツリーも入れてあげた。

なんか未来都市みたい...

さて、このたびの上京の主な目的、サナギにとっては何を隠そう秋葉原。いっかいは見ておきたかったのだそうだ。で、朝早く宿を出るも、きっと秋葉原の朝は遅い。ので、上野で降りて公園をぶらぶら。何気なく不忍池に行ってみると、それはそれは見事な蓮の花が大きな池一面に極楽浄土のように咲いている!あてのない旅で、こういう思わぬ風景に出会うのが一番嬉しい。

不忍池の蓮の花


サナギのリクエストによる構図


「かめがたまごを生みました(7/10)。ふまないでください」
と書いてある置き手紙を撮るサナギ
を撮る私。


そして、サナギは念願の秋葉原へ。最初は街の異様な雰囲気に気後れしていたものの、その後はまるで水を得た魚のようにすいすいとひとりで街を徘徊した様子。

私は付き合いきれず、駅前のカフェで一服。久々に紙の方の「白蝶日記」を書いた。

でも、この秋葉原という街、もとはマニアックな電気関係のパーツを物色するための街だったことが実感できたのは収穫。あちこちに、ものすごく専門的な部品やさんがあり、亡き父がいたら狂喜したであろうようなお店がいっぱい。父の影響か、私もこういう店を覗くと何となく心が躍る。

でもまあ、概して秋葉原は耳が疲れる街だった。常に節操無く音が放たれていて、いっときも休まることがない。そういう街はやっぱり苦手。

隅田川
その後、神保町に移動。古本街をふたりで徘徊する。が、日曜日のため休みの店が多く、街の雰囲気を味わうだけとなった。秋葉原とは対照的にこちらは音のない街。どの店も、本好きに配慮してのことか、店内がしーんとしていた。本当に「しーん」という音が聞こえるほど静か。

中古レコード屋で、グスタフ・レオンハルトのパルティータを格安で買ったり、古本屋で入院中の友達用に司馬遼太郎の『花神』全巻を買ったり(大阪にもあるとは思うが)、それなりに収穫はあった。

サナギのほうは、神保町で入ったレトロなカフェで、隣のテーブルのお姉さんたちが話していた話があまりに刺激的で、ずっと聞き耳を立てていた。何でも、「ジブリ作品の裏設定」とやらの、ものすごく専門的な話だったそうだ。そういう人達に出会うのも神保町っぽくて良かったかも。

ホステルは、本当に寝るためだけの場所だったので、夜はなかなか宿に帰る気にならず、隅田川の川べりでふたりでぼーっと夕涼み。酒盛り舟が次から次へと通るのをぼんやりと眺めていた。そして、視界にはまたあやつが!断じて見にきたわけではないのに、いちいち人の視界に侵入する!!

それにしても、隅田川、びっくりしたのはその川面の高さ。満潮だったのか、何らかの理由でたまたま水量が多かったのか、水面が怖いほど地面すれすれ。それなのに、誰も怖がる様子もなく、平気で川べりを歩いている。なんで??いま急に大雨が降ったり、地震が起きたりしたら、いっぺんに水に呑まれるよ!?なんでここの人たちは、こんな水面の高い川のそばに平気で暮らしているんだろう。誰か知っていたら教えてください。

そして、2日目の朝、もう宿を引き上げて新宿方面に向かうため、浅草に別れを告げた。神戸でいうなら新開地っぽい雰囲気のこの浅草という街は、私もサナギもなかなか気に入った。そういえばここはジャンプ連載の「こち亀」の両さんの生まれ故郷。両さんはこういう町で育ったんだなあ...と感じ入ることしきり。

浅草の、この場末な感じがよかった。
天気が悪かったので余計に雰囲気が出る。


浅草で。朝の猫ちゃん。

(さよなら浅草!と思って別れを告げたが、実はこの日、夕方また浅草に戻ってくることに。)


さて、2日目の予定はサナギは池袋(何があるんだ?)、私は明治神宮の森。ところが、あいにくの雨。サナギはひとりでさっさと池袋散策に行こうとするし、一方の私は大雨の中、森に行くのをためらって、計画がかみ合わずちょっと喧嘩別れのようになってしまった。仕方ないので、雨にもかかわらず私はひとりで予定通り代々木の森へ。若干すねながら。

原宿というのは本当に特殊な駅だ。表側はド派手な若者であふれ返っているにもかかわらず、ちょっと裏に回ると深い森でヒグラシが鳴いている。ものすごい対比。でも、「パワー」という意味では、何か両者に通じるものがあるのかもしれない。

雨の明治神宮
ヒグラシの声が一人ぼっちの淋しさを煽る

本殿に着くと、立派な楠木が出迎えてくれた。何にも邪魔されずに育つと、こんなにも伸びのびと枝を広げて、見事な樹形を作るのだなあと感心。本殿よりも、むしろこの楠を拝みたくなる。


立派なクスノキ!
ちょうどこの日は広島の原爆記念日だった。それと関係があるのかどうか分からないが、本殿に向かい合う長椅子に、軍服姿の少年が座っていた。とても静かに、瞑想するようにじっと長い間。何を思っているのか分からないが、その凛とした姿に一瞬、戦時中にタイムスリップしたかのような、あるいは時空を破って現れた幻影を見たような気分になった。

戦争でフィリピン沖に散った母方の祖父のことをふと思ってみた。多くの人が色んなやりきれない思いを抱えてこの神社にやってくるのだろう。靖国神社もまたしかり。

本当に色んな種類の樹木が茂っていた

明治神宮の森は素晴らしいというのを色んな本で読んだ。東京にあんな森があることを多くの人が誇りに思っているらしい。是非どんな森か見てみたいというのが訪問の動機だった。

確かに、木の種類がとてつもなく多いということが素人目にも分かる。そして、どの木もすごく元気そう。深い森の木々の間をひとりでゆっくりゆっくり歩いていると、ようやく心が落ち着いてきた。さっき喧嘩別れしたサナギに、次は穏やかに会えそうな気がしてきた。

私に合流すべく池袋から原宿に向かうサナギを待つ間、駅前で人間観察。ありえないような化粧と衣装の若者が次から次へと通り過ぎる。その付けまつげの種類の多さに驚く。カラーコンタクトあり、入れ墨あり。その装飾たるや、まるで少数民族の宗教儀式のよう。ある意味、神聖な感じがする。

そこへ突如現れたのが傘売りのおじさん。おそらく日本語は話せないのだろう、身振り手振りで、最低ランクのビニール傘を1本500円で売りさばいていく。傘は飛ぶように売れる。近くのコンビニの傘はもう売り切れだったのだ。なかなかやるな。おっちゃん。

原宿駅前に突如現れた傘売りのおっちゃん(黒人)

そして、私が何より注目したのは、このおっちゃんの商売道具であるこの自転車。可愛い3輪自転車だ。背面には、「サンリン自転車生活社」と書いてある。神戸に帰ったら、さっそく検索してみようと思い、ばっちり写真を撮っておいた。(さっき調べたら、すぐに見つかった。→サンリン自転車生活社

おっちゃんの自転車

池袋でちょっぴり迷子になったらしいサナギと無事合流し、食事するところを探すが、めぼしいところは軒並み定休日。どうしよう...新幹線に乗る前に最後に一回ぐらいちゃんとした店で食事したいし...ということで、浅草で見た「神谷バー」まで戻ることに。やっぱり浅草は落ち着くな~と、庶民の社交場「神谷バー」で、それぞれ好きなものを貪り食う。美味い!そして、私は念願の「デンキブラン」なるものを飲んでみる。これも美味い!!


これが電氣ブラン!

「電氣ソーダ」とか!(笑)

やっぱり浅草に戻ってよかったな~と、大満足で東京駅に向かった親子でした。ふたりとも計画嫌いなので、私達親子の旅はいつも無計画(えっへん!)。そして、まあ無計画なりに、なかなか楽しい旅だった。

家が浅草に近いばっかりに突如呼び出された同級生のKくん、産後で忙しいにもかかわらずいきなりメールで道案内をお願いしたNさん、お世話になりました。旅先で友達に会えるのは本当に嬉しい!

最後にまた浅草の夕餉待ち中の路地猫さん達をぱちり。

ちゃんと車に轢かれないところで餌待ち。

母へのお土産に(といいつつ、実は自分用に)、デンキブランを買った。

瓶も箱も、味もレトロな感じ。


で、だ。このサンリン自転車生活社、私の途方も無い夢:「田舎暮らしを、何とか自動車なしで実現したい」というものへの道を開いてくれるんじゃないかと思う。1台約15万円。払えない値段じゃない。屋根だってつけられる。形を工夫すれば、人だって乗せられるんじゃないだろうか。

インドでは、何でも自転車にくくりつけて運ぶ。どんな大きいものでも自転車で運んでしまう。そして人間もしかり(人力車の前に自転車をつける)。日本でも工夫次第でもっと充実した自転車生活が送れるはず、とかねてから思っていた。ようやく日本にもこんな自転車を作る人が出てきたんだ!

すごく未来が明るく見えてきた。ありがとう、傘売りのおっちゃん!(笑)