久々に長い小説を読んだ。『小さきものたちの神』(アルンダティ・ロイ)というインド人女性の書いた本。イギリスのブッカー賞を1997年に受賞。内容はあまりに重くて、読んだあとしばらく何もできなかった。
きっかけは、雨宮処凛の自伝、『生き地獄天国』(ちくま文庫)を読んだこと。これも壮絶だった。その雨宮処凛が今回の大地震の直前に対談した相手が、このインド人女性だった。
雨宮処凛という人は、ビッグイシューの中の「世界の当事者になる」という人気コラムの著者。とても気の利いた発言をするので、どんな人かと自伝を読んでみたら、とんでもなく苦しい半生が描かれていた。まだ年齢的には若いようだが、舐めた苦労は一生に値するかもしれない。その苦労と引き換えに、実のある言葉を獲得した人なのだと思う。
通勤時、飽くことなく電車の窓からの景色を楽しんでいる。木々の若葉と光の織りなす色つやが何ともいえずに美しい。重い内容の本を立て続けに読んだあとだったから余計にそう思ったのかもしれない。動物(人間も含めて)の苦悩に満ちた儚い一生に比べて、植物たちの何と力強く美しいことだろう。やっぱり私は人間のつむぐ言葉よりも、陽の光や植物の色・形による非言語的なメッセージに強く惹かれる。
この春の収穫は、ザクロの木の若葉の色が鮮やかなオレンジ色をしているということに気づいたこと。ザクロの木は夏、秋、冬と観察してきた。このたび春の新芽を確認して、ようやく一年を通したザクロの姿を知ったことになる。鮮やかなオレンジ色の花をつけるザクロ。その新芽もまたオレンジ色に輝くということが分かったとき、なぜか感動した。取るに足らないことかもしれないけど、私にとっては大切な発見。
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