たぶん何度も読み返すだろうと思う本に久々に出会った。
『どくとるマンボウ昆虫記』(北杜夫著 新潮文庫)
こんな名著に、なんで今まで出会わなかったのか不思議。
最初、何やらフニャフニャとはぐらかしてばっかりで、あまり本格的に昆虫の話が出てこず、虫をネタにしたナンセンスものかと思いきや、それは単なる「照れ」だと分かる。読み進むにつれ、この人が昆虫や植物に関してとてつもない知識と経験の持ち主だということが次第に明らかになってくる。
それはまるで、色んな人の集まるパーティーで虫好き同士が出会い、最初はそれほど虫に関心のない人も混じって軽い会話をしていて、次第に一人去り二人去りしたのち、夜も更けて、お酒もすすんで、最後にごく少数の本当に虫が好きな人だけが残って、ようやく本気モードで虫談義が始まるような、そういう時間の深まりを思わせるような構成になっている。
その本気モードの虫談義の面白いこと面白いこと!
斉藤茂吉の次男として生まれ、ひどい躁鬱病を患いつつ、精神科の医師兼患者として、作家マンボウとして大活躍した北杜夫という人。その多面的な人生は各方面において凄まじく、近親者たちにとっては本当に大変な人だったと思うけど、その成果物を享受するだけの私たちには、この上ないよろこびをもたらしてくれる。
私も読んでみようと思います。好奇心のツボが変わると面白いって思えるものの幅が広がりますよね。
返信削除あ、まだでしたか?是非!
返信削除ほんとうに、好奇心は生きる源ですね。