行きの車のなか。チャイルドシートに縛られた甥っ子の相手をすべく、私も後部座席に座った。ごきげんさんの甥っ子。なぜかずっと車の天井を見ている。日光が何かに反射して、天井に七色に光るひし形を作っていたのだ。それが行きつ戻りつするのを甥っ子は必死で目で追っている。
私がそのひし形を指で刺す真似をすると大喜び。そして、今度はその七色の光をそうっと摑む真似をして、それをそうっと甥っ子の手のひらに乗せてやった。
すると、なんと!甥っ子は手のひらに乗っている(はずの)七色の光を、そうーっと自分の口まで運び、遠慮がちに「はうっ」と食べたのだ!そして、極上の笑顔を私に向けた。
何という美しい瞬間だったろう!まるで何か重要な儀式のようだった。まだ何も話せない1歳の子が、美しい七色の光を食べて美味しかったと微笑んだ。このことを、私は一生わすれない。
思わず、宮沢賢治のあの有名な序文を思い出した。
「わたしたちは、氷砂糖をほしいくらゐもたないでも、きれいにすきとほつた風をたべ、桃いろのうつくしい朝の日光をのむことができます。(中略)わたくしは、これらのちいさなものがたりの幾きれかが、おしまひ、あなたのすきとほつたほんたうのたべものになることを、どんなにねがふかわかりません。」
(全文はこちら→『注文の多い料理店』序)
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