柘榴(ザクロ)の季節。夏に鮮やかなオレンジ色の花を咲かせていたのが、今、これまた鮮やかな真紅の実を実らせている。どうしても食べたい。でも、残念ながらどの柘榴も誰かの家の庭木。盗むわけにいかない。
それで、しかたなくお店で買った。カリフォルニア産。物心ついて以来、初めてザクロを食べる青虫は、もう大喜び。一粒一粒ちまちまと、実をはずして食べた。私も大好き。何より色がいい。まるでガーネットを食べてるみたい。いや、ガーネットは日本名「ざくろ石」だから、逆か。
毒々しくて、ちょっと「血」のような雰囲気も持っている。それもまたいい。吸血鬼か何かになったような気分で、残酷に、荒々しく貪る。
この果物は、他のどんな果物にも似ていないのがいい。青虫が、「ザクロって、たぶんザクロ科ザクロ目ザクロなんやろな」と言った。事実、ザクロは独立した科に分類される。
それにしても、国産の柘榴が食べてみたい。その辺にいっぱい成っているのに... 気候的にも問題ないみたいだし、味もいいのに、なんで柘榴は商品化されないんだろう?
ところで、先日、ある人から私の撮る写真がなかなかいい、と褒めてもらったのに気を良くして、何となく「写真家の目」で風景を眺めつつ朝の通勤電車に乗っていた(単純!)。その日は空気の澄んだ、秋晴れの、朝日がきらきらした日だった。
電車がちょうど芦屋あたりを通り過ぎるとき、線路のそばの家の庭に生えた1本の大きな柘榴の木が見える。今ちょうど、その木に柘榴がたわわに実っている。その柘榴の実が、そのとき、まさに朝の太陽に照らされて、この世のものとは思えないほど美しく輝いていた。息が止まりそうなほど美しかった。
「写真家」の私は、これだっ!と思った。この一瞬。この輝き。こういうのを捕らえなければ!でも、その瞬間、すぐにそれは無理だということも分かった。その美しさを作り出した全ての条件を、もう一度揃えることは不可能だと悟った。この季節、この天気、電車の窓から見るというこの状況、温度、湿度、そして何より、上機嫌だった私の気分。これら全てが揃わなければ実現しない「美」なのだ。再生不可能。
生きることすべてが、きっとこんな感じなのだ。一瞬一瞬を大切に味わおう。
...なんか、あまりにもありふれた結論だけど(笑)。
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